唾液の分泌量低下で発症するドライマウス
ドライマウスはさまざまな原因で唾液の分泌量が低下し、口の中が乾燥する病気です。糖尿病や腎不全などの病気を介して起こることもあれば、ストレスや筋力の低下、さらには薬剤の副作用で起こることもあります。例えば更年期障害の不定愁訴に悩んで抗うつ剤を飲み、その副作用でドライマウスになり、唾液が出ないことにストレスを感じて、さらに強いドライマウスになっていく。つまり、複合的な病因によって、ドライマウスが発症します。
増え続ける現代病
ストレス社会は人々に緊張をもたらし、そのため常にのどの渇きを訴える人が増えています。また、ファストフードを食べる機会が増え、やわらかい食べ物を好むようになり、咀嚼時間は昔に比べてずいぶん短くなりました。かむという行為は唾液の分泌を促しますが、唾液を分泌する唾液腺は筋肉によって裏打ちされています。その筋肉が衰え、唾液の分泌量がますます低下しドライマウス症状になるのです。
ドライマウスはまさに現代病であり、患者さんは増え続けています。このまま放置して対処しなければ、むし歯や歯周病だけでなく(図1)、誤嚥下性肺炎などの全身疾患になる可能性があります。また。ドライマウスの症状は膠原病の一つである難病のシェーグレン症候群でもあらわれます。
ドライマウスには口の中の粘つき、舌の痛み(図2)、口臭などの症状のほか、乾いた食品を食べられない、食べ物をうまく飲み込めないといった症状があります。口の中が乾くと、唾液の持っている自浄作用が失われ、通常よりも感染症になりやすくなります。特に高齢者は、そのまま放置しておくと、食べ物を飲み込む能力が低下する摂食嚥下障害から重篤な病気になりかねません。
眼や口腔など、外界にさらされている臓器は、ウイルスや細菌の侵入を防ぐために外分泌液が流れていて、生体防御の最前線を担っています。そこが枯渇すれば体内に不利益な微生物の感染が生じることは自明です。